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2010年9月17日 (金)

ふるさとものがたり天竜「椎が脇渕の竜宮城」より①

Shigafuchi4  信州の諏訪湖に源を発し、赤石山脈の深い山あいを縫って流れる天竜川が、やがて平野部へと顔を出すあたり、天竜市鹿島(かじま)がある。いくすじもの支流を集めて、とうとうと流れて来た大天竜の水は、この鹿島で、大きくわん曲した岸壁に激突してうずを巻き、『椎が脇渕』という勇壮な流れを作っている。
 その淵のはるか上の方には、椎の木のおい茂った深い森があり、そこにはその昔から、椎が脇神社がおまつりされている。

 むかしむかしのことである。
 ある日椎が脇神社の神官が、渕の上の崖で木の枝を切っていた。
 崖の上から見る椎が脇渕は、またことのほか恐ろしい、身の気(毛)もよだつような、うず巻きの渕を見おろして、さすがの神官も足がすくんだ。しかも、淵には竜がいるという。
 その時どうしたはずみか、神官の手から、ぽろっと鉈がはずれ、
「あっ。」
と、思う間もなく、鉈はころころところげて、渕の水面めがけて落ちていってしまった。

「さあ、困ったぞ。鉈がなくては仕事もできぬ。仕方がない。帰るとするか。」
 神官は一人事を言いながら、もう一度渕をのぞいてみた。
 すると、不思議不思議。うず巻きの渕は、いつの間にやら穏やかになって、水底までくっきりとすけて見えるではないか。その上、ころげ落ちた鉈まで、はっきりと手の届きそうなところに見える。
「何だ。あんなに浅いのか。あれなら拾えそうだわい。」
 神官は、そろりそろりと、崖をおりて行った。そして手をさしのべ前かがみになったとたん、
「あっ。」
 足をすべらせた神官は、渕の中へ落ちて気を失っていった。

 どのくらいたったのであろうか。
 神官が目をさますと、そこはまばゆいばかりに光り輝く、竜宮城であった。
 神官は、そっとあたりを見回した。
 すると美しい乙姫さまが鉈を持って現れて、
「わたくしは、鉄のものが嫌いです。あなたの落とした鉈をお返しします。もう決して、鉄のものを落としてはなりませぬぞえ。」
と、言うのだった。

「はい、わかりました。しかしこんなところに竜宮城があったなどとは全く驚きましたなあ。」
 神官がそう答えると、乙姫さまは神官をじっと見つめて、
「椎が脇渕の竜宮城のこと、決して他言してはなりませぬ。二度と鉄のものを落としてはなりませぬ。この二つのことを守って下さるなら、あなたにいいことを教えて進ぜましょう。」
「はい、決して他言はいたしませぬ。二度と落としはいたしませぬ。」
 神官があわててそう言うと、乙姫さまは大きくうなずいて、
「それでは教えてあげましょう。これから何か入用なものがあった時、淵へ来て言いなさい。きっとそのものを貸して進ぜましょう。」
「え!!ほんとうですか。ありがとうございます。乙姫さま。」
 神官はそう言いながら、また、意識のうすらいでいくのを感じていた。

 神官が、次に気がついたのは、渕の上だった。
 その手には、しっかりと鉈がにぎられていた。
「不思議じゃ。わしは、夢を見たのであろうか。」
 神官は、首をひねりひねり、家に帰って行った。(「ふるさとものがたり天竜・第2章二俣地区」より一部引用)
   ◆       ◆       ◆       ◆

 上流にダムが建設された現在では、天竜川の流れは渦巻くような激流ではありません。鹿島橋と天浜線鉄橋との間のこの辺りが、ちょうど「椎ヶ脇神社」の石段下に当ります。

 古文書によると、この時神主が会ったのは乙姫さまではなく竜神であったとされているそうです。「竜宮伝説」は、天竜川流域に広く伝えられている「竜神伝説」の変化したもののようです。竜は金物が嫌い―金属が水によって錆びつくことを戒めているような気がします。

 話の後段は、「椀貸し伝説」へと発展して行きます。(→つづく

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